歯がない場合の治療法

抜けた前歯

歯がない状態を放置していると、認知症や脳梗塞などの恐ろしい疾患リスクを抱えるなど、多くの悪影響が懸念されます。そのため、歯を失った場合には、失った歯を補う治療が必要となります。

しかし、抜歯後の治療選択によって、さらなる歯の喪失を招く可能性もあります。抜歯後の治療法は、将来の歯の健康、さらには全身の健康も考慮して、慎重に選択することが大切です。

ブリッジ

ブリッジ

ブリッジとは、両サイドの歯を支えとして歯を補う治療法です。保険が適用となるなど、メリットも多くありますが、将来的に他の歯の喪失リスクを高めるなど、見落としてはいけないデメリットもあります。

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ブリッジのメリット

ブリッジのメリットは次の通りです。全体的にメリットが多く、白色の素材を使用すれば審美性も比較的高いのですが、奥歯の場合、保険で白色の素材を使用できませんので、銀歯になります。

見た目 前歯であれば保険で白い歯が入る
咀嚼力 天然歯の60%程度
噛み心地 天然歯と同じ感覚で噛める
味覚 影響はない
費用 保険が適用となる
治療期間 比較的短く済む

ブリッジのデメリット

ブリッジは、以下のようなデメリットがあります。長期的にみると、口の中の健康維持に悪影響を及ぼすことが懸念されます。

他の歯への影響 健康な歯を削る必要がある
顎の骨への影響 骨の吸収が起こる
寿命 8年程度
適用 支える歯が必要
健康な歯を削る必要があります

ブリッジにするためには、支えとなる両サイドの無傷で問題のない歯を削る必要があります。部位によりブリッジの寿命は異なりますが、7年半~8年で破損するケースも少なくありません。また、噛み合わせが正しくなければ、負担がかかることによってさらに寿命を縮めてしまいます。

ブリッジが寿命になった頃(ブリッジ破損時)、支えていた歯がダメになっているケースも多いです。支えとなる歯に大きな負担がかかること、装置と歯肉の隙間に汚れが溜まりやすく、支えとなる歯が虫歯になりやすいことなどが原因です。
健康な歯をブリッジの土台にすることによって、その歯の寿命を縮めてしまう可能性があるのです。

補う歯が多くなるほど過重負担となります

複数の歯を失った場合にも、ブリッジによる治療が可能な場合もあります。しかし、補う歯が多いほど過重負担となり、支えになる歯のダメージが大きくなります

臼歯部には、1回の咀嚼で体重と同じだけの負担がかかります。1回の食事で平均540回咀嚼を行っていますので、その負担はとても大きなものです。しかし、ブリッジの支えとなっている場合は、1本にかかる咀嚼の負担はさらに大きくなります。

通常3本の歯にかかる負担が、ブリッジを支える2本に集中してかかるのですから、咀嚼の負担で寿命が短くなることも納得できるでしょう。仮に、2本の歯を失い、4本の歯で支えていた場合、6本分の負担が4本にかかり、最悪の場合4本の歯を一度に失ってしまうこともあります。

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入れ歯

部分入れ歯と総入れ歯

入れ歯のデメリットとして、「噛みにくい」「外れてしまうことがある」などはよく知られていますが、実はそれだけではありません。「仕方がない」と諦めて使用を続けている方も少なくありませんが、その悪影響は全身に及ぶ可能性もあります。

入れ歯について詳しく知る

入れ歯のメリット

入れ歯は、失っている歯の本数に関係なく、多くの症例で適用となります。保険で作ることができますが、入れ歯のデメリットをカバーして、審美性や機能性を高める場合には保険外診療となります。

費用 保険が適用となる
治療期間 比較的短く済む
適用 多くの症例で適用となる

入れ歯のデメリット

入れ歯は、骨吸収が進むと合わなくなってしまいます。そのため、3~5年おきに作り直すケースが多いです。

見た目 (部分義歯の場合)バネが目立つ
咀嚼力 天然歯の15~30%程度
噛み心地 よく噛めない・噛みにくい
味覚 熱が伝わず、味を感じにくい
他の歯への影響 (部分義歯の場合)バネをかける歯に負担がかかる
顎の骨への影響 骨の吸収が起こる
寿命 3~5年程度
バネをかける歯の喪失リスク

部分入れ歯の場合、バネ(ワイヤー)をかける歯は喪失するリスクが高くなります。部分入れ歯は、バネをかける歯を固定源とするため、その歯に過度の負担がかかってしまうのです。
また、バネをかける歯は、バネを通すために少し削りますが、このことも虫歯のリスクを高める原因となります

部分入れ歯により、さらに歯を失うリスクを高めるケースは少なくありません。このようにして、次々と歯が抜けることになるのです。

入れ歯の咀嚼力が低いことによる悪影響

総入れ歯の場合、天然歯の15~30%程度しか咀嚼力を回復できません。インプラントでは天然歯の90%もの咀嚼力を、ブリッジでは60%程度の回復が期待できます。義歯の中でも総入れ歯は、特に噛む力が弱く、よく噛めないことによる悪影響も懸念されます。

歯がない状態が招く悪影響でもご紹介した通り、よく噛めないことは、糖尿病や脳血管疾患のリスクを高めるなど、悪影響が全身に及びます。咀嚼力が著しく低下することの悪影響は、単に「食べにくい」だけでは済まないのです。

ドライマウス・認知症の発症リスクを高める

合わない入れ歯を長期的に使用していると、舌を動かす空間が狭くなり、舌をスムーズに動かせなくなっていきます。舌の動きは唾液の分泌にも影響していて、舌の動きが緩慢になることで、顎下腺・舌下腺といった唾液腺への刺激が減り、唾液の分泌量が減少してしまうのです。

また、舌は脳神経とも結びついているため、認知症のリスクを高める・脳への血流量を減少させるといった脳への悪影響も懸念されます。

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インプラント

インプラント

インプラントは「費用が高い」という認識をお持ちの方も少なくないかもしれません。しかし、ブリッジや入れ歯により歯の喪失を繰り返し、全身疾患の発症リスクを高めることになるならば、高い治療とは言えないかもしれません。

インプラントについて詳しく知る

インプラントのメリット

インプラントのメリットの一つに、寿命の長さがあります。10年後の平均残存率は90~95%であり、長く使い続けられる治療法と言えます。適切なメンテナンスを行い、インプラントはもちろん、残っている歯の寿命も延ばすことが大切でしょう。

見た目 天然歯と同等
咀嚼力 天然歯と同等
噛み心地 天然歯と同じ感覚で噛める
味覚 影響はない
他の歯への影響 ない
顎の骨への影響 骨吸収を抑制できる
寿命 長期的に使用可能
他の歯を失うリスクを高めることはありません

インプラントは従来の治療法とは違い、失った歯を補うために、さらなる歯の喪失リスクを高めることはありません。インプラントは独立した新たな人工の歯を植立するため、他の歯を支えにしたり、健康な歯を削ったりすることなく歯を補えるのです。

顎の骨が痩せるのを防ぎます

ブリッジや入れ歯で歯を補った場合でも、咀嚼による刺激は顎の骨に伝わりません。そのため、歯のない場所は、徐々に骨吸収が進みます。
顎の骨が痩せると、見た目が老けた印象になったり、舌の肥大などによりドライマウスを招いたり、さまざまな悪影響があります。しかし、インプラントは人工の歯根を埋め入れるため、天然歯と同様に骨にも刺激が伝わって、骨が痩せることはないのです。

インプラントのデメリット

インプラントはメリットの多い治療法ですが、デメリットもあります。デメリットを把握したうえで、納得して治療を受けることが大切です。

また、治療を行う医院によって治療の質に違いがあるため、医院選びが肝心でしょう。インプラント治療の技術・経験はもちろんのこと、噛み合わせ調整の技術を持ち、全身の健康につながる治療を行える医院選択が大切でしょう。

費用 自由診療であり高額になりやすい
治療期間 長くなりやすい
適用 適用とならない場合もあります
インプラント1日当たり約140円は高い!?

インプラントは保険が適用となりませんから、費用が高額になりやすいです。しかし、繰り返し歯を失い、新たに治療が必要になるブリッジ・入れ歯に比べ、インプラントは他の歯に影響することなく長期的に使えます。
もちろん適切なメンテナンスが必要になりますが、世界で初めてインプラント治療を受けた患者様は、亡くなるまでの40年以上の間インプラントを使い続けていました。

仮に20年間インプラントを使用した場合、治療費が100万円だったとしても1日当たりの費用は約137円となります。

1日当たりの料金
1,000,000円÷(365日×20年)=136.9…円/日

また、1回の食事で行う咀嚼回数は平均540回、1日に行う咀嚼回数は1,620回ですが、その1回あたりに換算すると、0.1円にも満たない金額です。

1回の咀嚼当たりの料金
1,000,000÷(1,620回×365日×20年)=0.084…円

将来の口の中の健康や全身の健康、健康寿命を考えると、決して高い治療とは言えないでしょう。

インプラントができないケース

全身疾患をお持ちの方の場合、治療が困難なケースもあります。例えば、糖尿病をお持ちの方で、適切な血糖値コントロールができていない場合、重い心臓病の場合などは、インプラント治療を受けられません。

しかし、持病がある方全員が、インプラント治療を受けられないわけではありませんのでご安心ください。
持病をお持ちの方は、担当の内科医との連携も必要となることから、治療を受ける歯科医院に持病についての申告が必ず必要となります。

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