歯科治療におけるインプラントとは、欠損歯の治療において顎の骨に埋め込む人工の歯根のことです。

インプラント

当たり前のことかもしれませんが、歯周病や虫歯、事故などにより永久歯を失ってしまうと、その箇所に歯が新たに生えてくることはありません。
そして、歯が抜けた箇所を、そのまま歯がない状態にしておくことには多くのデメリットがあるため、人工の歯により欠損部分を補う必要があります。

インプラントを用いた欠損治療では、顎の骨に穴を開け、インプラント(人工歯根)を埋め込み、人工の歯を作り出します。

近年は、4~6本のインプラントで片顎全ての歯を取り戻せるオールオン4という治療法も登場し、費用面や身体への負担を抑えて、全ての歯をインプラントにすることも可能になりました。総入れ歯の方でも、一度の治療で多くの歯を取り戻すことが可能です。

また、従来の欠損歯の治療方法にはブリッジや入れ歯、クラウンなどがありますが、インプラントが他の欠損治療と異なるのは、天然の歯のような機能・見た目を取り戻せることはさることながら、歯だけでなく歯根も取り戻すことができるという点です。歯根を埋め込むため、骨に刺激が伝わり、顎の骨が痩せるのを防ぐことができるのです。

インプラントの特徴

  • ◎ 特徴その1継続的なメンテナンスにより、他の治療よりも寿命が長い
  • ◎ 特徴その2健康な歯に負担がかからず、歯を削る必要がない
  • ◎ 特徴その3天然の歯と同等の見た目に仕上げられる
  • ◎ 特徴その4入れ歯に比べ、機能性・咀嚼能力が高い
  • ◎ 特徴その5顎の骨の吸収を抑制できる
  • ◎ 特徴その6違和感・異物感がほとんどなく、発音に支障が出にくい

歯科治療におけるインプラントは「デンタルインプラント」

歯科治療におけるインプラント治療が一般的になってきて、「インプラント」と言えば、歯科におけるインプラント治療を思い浮かべる方が多くなってきました。しかし、インプラントとは、治療や美容を目的として埋め込まれる人工物の総称であり、歯科治療以外でも多く用いられています。

そのため、歯科治療におけるインプラントは、正しくは「デンタルインプラント(歯科インプラント)」ですが、単に「インプラント」と呼ばれることが多くなっています。(当サイトでも、以下「インプラント」と呼んでいきます。)

インプラントには、歯科治療におけるインプラントの他、美容整形手術・豊胸手術で用いられるシリコン製バッグ、整形外科・骨折手術に用いられる(骨を固定する、人工関節に置き換える)プレートやボルトなどがあります。

インプラントは古い歴史を持つ治療法です

Dr. Brånemark
Dr. Brånemark

インプラントによる治療が日本で行われるようになったのは、入れ歯やブリッジよりも遅いため、「新しい治療法」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
しかし、インプラントは古い歴史を持ち、その歴史は紀元前にもさかのぼります。もちろん、その頃のインプラントは現在のものとは大きく異なり、貝殻が使用されていたと言われています。

その後、金やサファイヤ、エメラルドなどの宝石など、様々な素材がインプラントに使用されてきましたが、どれも長期的な安定感が得られるものではありませんでした。
しかし、1952年にスウェーデンの医学博士であるペル・イングヴァール・ブローネマルクが行っていた実験により、チタンの生体親和性が偶然に発見され、現在のような、自分の歯のような噛み心地を取り戻すことができる治療にまで発展しました。

チタンが持つ骨とくっつく特性「オッセオインテグレーション」

インプラントの素材は、現在も純チタン製やチタン合金製が主流です。これは、チタンが骨と強く結合する特徴を持っており、第2の歯と呼ばれるほど、天然の歯に近い機能を取り戻すことができるためです。

人間の体には異物を排除する働きが備わっていますが、チタンは異物とみなされることなく、骨と強く結びつく特徴があるのです。骨とチタンが結合するこの現象を「オッセオインテグレーション」と言います。

チタンの特性

◎ 顎の骨と生着しやすい
生体親和性が高く、骨と結合する性質があり、インプラント治療において、グラつきのない天然の歯のような噛み心地を実現することができます。
◎ 強度・耐性に優れる
軽くて強く、さびにくいという、優れた特徴があります。