よく噛むことは全身の健康につながります
噛む事の重要性について
私たち現代人が食事中に噛む回数は、昔と比べてとても少ない傾向にあります。
これは、食文化の変化や食品の加工技術の進歩により、昔と比べて噛み応えのある硬い食べ物を摂取する機会が激減したことに起因しています。
噛む回数が減ることで、特に問題がなければよいのですが、最近では噛まないことによるさまざまな健康問題が指摘されており、それと同時によく噛むことの重要性が見直されています。
噛む回数・噛む時間の変遷
弥生時代 | 鎌倉時代 | 江戸時代 | 現代 | |
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一食ごとの噛む回数 | 3,990回 | 2,654回 | 1,420回 | 620回 |
一食ごとの噛む時間 | 51分 | 29分 | 22分 | 11分 |
現代人の咀嚼回数は弥生時代の人々の“6分の1”!
よく噛まないことによる健康への悪影響
- 歯並びの悪化
顎がしっかりと発達せず
歯並びが悪くなる - 頭痛・肩こり
噛み合わせが悪くなり
頭痛・肩こりが引き起こされる - 消化不良
唾液が十分に分泌されず、消化不良を起こしやすくなる
よく噛むことによる健康効果
よく噛むことによる健康効果を示す食育標語として、1990年に日本咀嚼学会が発足した「卑弥呼の歯がいーぜ」というものがあります。
それぞれどのような効果を表しているのか、詳しくご紹介します。
よく噛むことによる健康効果を読む
「ひ」・・・肥満防止
よく噛んで食べると唾液の分泌が促進され、唾液中の酵素の働きによってより多くのデンプンが糖に分解されます。
脳の視床下部に位置する満腹中枢は、血糖の上昇により刺激されます。つまり、よく噛んで食べることは満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防ぐことにつながるのです。
よく噛むことはダイエットの基本です。反対に、早食いが癖になっていると太りやすい体質になってしまいます。
「み」・・・味覚の発達
よく噛んでゆっくりと食べ物を味わうと、唾液の分泌量が増えます。唾液には、味の情報を味蕾(みらい)という舌の組織に伝える働きがあります。
唾液の分泌が促される
素材本来の味をよく感じられ
味覚の発達が促進される
「こ」・・・言葉の発達
噛むことを意識すると、顎が疲れるという方も多いでしょう。よく噛んで口周りの筋肉を動かすことは、顎の発達を促します。
顎がしっかり発達する
歯並びが良くなり、噛み合わせも正常となる
言葉を綺麗に発音できるようになる
また、口周りの筋肉が鍛えられることで、表情が若々しく豊かになるというメリットもあります。
「の」・・・脳の発達
顎を開けたり閉じたりする動作は、脳に栄養や酸素を送り、血流を促進して脳細胞を活性化させます。
よく噛むことによる脳への影響
- 子供の知育をサポート
- 大人の脳の衰え・認知症の発症を予防
「は」・・・歯の病気予防
唾液には口腔内を綺麗に保つ自浄作用や殺菌作用、初期の虫歯を修復する再石灰化を促す働きがあります。
よく噛むことで、唾液腺から唾液がたくさん分泌される
歯の病気である虫歯や歯周病の予防につながる
「が」・・・がんの予防
よく噛むことで分泌される唾液には、ペルオキシダーゼやカタラーゼと呼ばれる酵素が含まれています。
これらの酵素には、タバコや食品添加物などに含まれている発がん性物質の活性化を防ぐことが分かっています。
「いー」・・・胃腸快調
食べ物をよく噛み砕くと唾液が増え、消化吸収がスムーズに行われやすくなり、胃腸への負担を軽くすることができます。
咀嚼回数が不十分だと・・・
唾液が十分に分泌されず、食べ物も消化されにくい形のまま胃へ送られることになるため、消化不良を起こしやすくなります。
「ぜ」・・・全力投球
歯を噛みしめる力があると、歯や顎が鍛えられます。全身にもぐっと力が湧いてくるようになり、体力・運動能力の向上につながります。
よく噛むということは、歯の健康維持はもちろんのこと、全身の健康を支える上でとても重要なことなのです。
よく噛むための工夫
現代における食事中の咀嚼回数の理想は、一口につき30回とされていますが、噛む習慣が身についていない方にとってはなかなか難しいことです。さまざまな工夫で、徐々に噛む回数を増やしていきましょう。
よく噛むための工夫を知る
1噛み応えのあるものを取り入れる
普段からやわらかいものばかりを食べているという方は、まずは積極的に噛み応えのあるものを食事に取り入れることから始めましょう。
食感を楽しめる食べ物
- 根菜、きのこ類
- 海藻類
- タコ、イカ
- 貝類
- 発芽米、胚芽米、玄米
また、間食においても、チョコレートやケーキなどの噛まずに食べられるお菓子は避け、するめやりんご、ナッツ類といった歯ごたえのあるものがおすすめです。
2調理法を工夫する
同じ食べ物であっても、調理法によっては違う食感や味わいが楽しめます。調理法を工夫して噛む回数を増やしましょう。
調理法の工夫例
- 加熱時間の調整
加熱時間を歯ごたえが残る程度にとどめる - 食材の切り方の工夫
料理に使用する食材を大きめに切る - 食材の組み合わせ
やわらかい食材に歯ごたえのある食材を加える - 調味料の調整
調味料の使用量を調整し、薄味に仕上げる
3飲み物や汁物で流し込まない
口の中に食べ物があると、飲み物や汁物で一気に流し込んでしまうという方は少なくありません。
飲み物や汁物で食べ物を流し込むと・・・
噛む回数が減り、胃腸にも負担をかけてしまう原因に!
食べ物が口の中にある間は、飲み物・汁物を摂取するのは避け、しっかりと噛むことに専念しましょう。
4家族や友人と一緒に食事をする
よく噛むには、それだけ食事に時間を掛ける必要があります。家族や友人を交え、ゆっくりと楽しみながら食事をすることは、咀嚼回数を増やすことにつながります。