前歯のインプラント治療は難しい!?
ブリッジとの比較/失敗例

高い技術や経験、知識が必要な前歯のインプラント構造

インプラントには、さまざまなメリットがありますが、審美性の高さもその一つです。前歯は審美性が特に求められる部位ですから、前歯をインプラントにしたいと考える人も多いでしょう。

しかし、前歯のインプラント治療は大変難しく、治療に当たる医師に高い技術や経験、知識が必要になります。リスクが高く、失敗が多いのも事実です。
前歯のインプラント治療こそ、慎重な歯科選びが必要です。

前歯インプラントの治療難度が高い理由

インプラント自体、外科手術が必要で、解剖学的な知識が必要な難しい治療です。しかし、そんなインプラント治療の中でも、特に難しいのは前歯治療だと言えるでしょう。
前歯のインプラント治療が難しいのは、次のような理由があるためです。

前歯を支える骨が薄い

骨移植や骨再生などの骨を増やす治療が必要な理由 インプラントが上あごの上顎洞を突き抜けている図

前歯を支える骨は大変薄く、インプラント埋入手術で骨吸収が起きてしまうこともあります。骨吸収が起こると人工歯根が露出して、見た目が悪くなってしまうこともあります。
そのため、前歯のインプラント手術の場合は、骨吸収によるインプラントの露出を防ぐため、骨移植や骨再生などの骨を増やす治療が必要になる場合も多いです。

骨吸収にともない歯肉が退縮する

前歯部は、インプラントの埋入で骨吸収が起こるケースが多いです。それに伴い、歯肉の退縮が起こる場合もあります。

見た目の良いインプラント治療を行うには、歯だけでなく歯肉とのバランスも重要になるため、歯肉のことも考慮した治療が必要になるでしょう。
歯肉退縮が起こると、人工歯根が露出したり、歯が長くなってしまったり、見た目が悪くなってしまいます。

前歯インプラントの失敗例

前歯インプラントの失敗には、細菌の感染など前歯以外の部分でも起こり得る失敗もありますが、「機能性に問題はないけれど見た目が悪い」といった審美性のトラブルもあります。

前歯が長くなってしまった

吸収が進んだ骨にインプラントを埋入しても、他の部位と歯茎の高さが異なるため、見た目が悪くなってしまいます。
骨吸収が進む原因には、歯周病や抜歯があります。歯周病は、進行するほど歯槽骨の吸収も進みますから、重度の歯周病で歯を失った場合には、歯周病治療をしっかり行うことはもちろん、骨を増やす治療が必要になる可能性が高いでしょう。
また、抜歯後は少しずつ骨吸収が進みます。歯を抜いてから時間がたっている場合には、骨吸収が進んでいる可能性があります。

笑った時に歯肉が見える人は、露出したインプラントが目立ってしまうため、審美性においても質の高いインプラント治療を行っている医師を選ぶ必要があるでしょう。

インプラントが細菌に侵されてしまった(インプラント周囲炎)

どの部位のインプラント治療でも起こり得ますが、細菌感染によってインプラントの周囲組織に炎症が起きると、インプラントを支える歯槽骨が溶かされ、最悪は脱落を招きます。

インプラント周囲炎は十分にメンテナンスを受けていなかったり、セルフケアがしっかりできていなかったりする場合にも起こりますが、歯科医院の衛生管理が不十分である場合にも起こります。
歯医者選びの際に、医院の衛生管理が徹底されているかどうかを確認することが必要でしょう。

歯茎が黒ずむ

歯肉の厚みは人によって異なります。歯肉の厚みが少ない人は、埋め込んだ歯根の色が透けて見えて、歯肉の色が黒ずんでしまう場合もあります。
埋入のポジショニングの問題もありますから、歯肉の色も含めて、過去の症例などで確認させてもらうと安心でしょう。
治療後の仕上がりについて、カウンセリングなどで十分に説明を受けることが必要です。

インプラントではなくブリッジを勧められることも…

骨の量や歯肉の量、笑った時の歯肉の見え方、歯周病の程度などによって、インプラントではなく、ブリッジなど他の治療法を勧められる場合もあるでしょう。
機能的にも審美的にも、優れた前歯インプラントの治療には、他の部位よりも厳しい条件があるのです。

また、全ての歯科医師が質の高い前歯のインプラント治療を行えるわけではありません。医師の技術的な問題も関係すると言えるでしょう。

インプラント費用は前歯の方が高い!?

インプラント費用は保険適用外であるため歯科医院によって異なりますが、前歯のインプラント費用は高くなりやすいです。
それは、骨を増やす治療が必要になったり、審美性の高い仕上がりにするために歯肉を増やしたり、インプラントを埋め込む治療だけでは済まないケースが多いためです。

理想通りの仕上がりを目指すならば、骨や歯茎の治療が必要になる場合もありますが、その分費用が高くなってしまうのです。

他の部位よりも高い!?
前歯インプラントのリスクとは

インプラント治療に限らず、外科手術にはリスクがあります。インプラント治療の他に、骨や歯茎を増やす手術が増えるのですから、リスクが増すと言えます。
高い治療技術を持った、信頼できる医師を見つけることがリスク回避につながるでしょう。

前歯治療で行われる骨・歯茎の治療

骨や歯肉を増やす方法はさまざまです。当院では、治療部位などに応じた適切な治療方法を行います。

自家骨移植

自家骨移植は、その名の通り自分の骨を移植する方法です。親知らずの奥などから骨を採取し、移植します。自分の骨が移植されるということはメリットですが、健康な部位にメスを入れる必要があり、体の負担が大きくなってしまうというデメリットもあります。

TE-BONE

幹細胞や血しょうから作った培養骨を使用する最新の方法です。動物の骨などを移植することもなく、体の負担を大きくすることがないというメリットがあります。

結合組織移植術(歯肉の移植)

口蓋から採取した歯肉を、歯肉の不足している部分に移植します。

前歯インプラントのための歯医者選び
3つのポイント

ポイント1
自分と似た症例を
持っているか
ポイント2
骨造成や歯肉移植などの
治療経験が豊富であるか
ポイント3
何らかのトラブルが
起こった時に対応できるか
(リカバリーが可能か)
患者にレントゲン写真を使ってインプラントの治療の話をする五十嵐院長

前歯のインプラント治療は、他の部位の治療とは異なります。多くのインプラント症例を持つ医師であっても、仕上がりの良い前歯インプラント症例を持っているとは限らないでしょう。

また、骨造成や歯肉の移植など、難度の高い治療を多くこなしている医師であることも望ましいでしょう。前歯のインプラント治療は、前歯治療の経験を多く積んだ医師のもとで受けることをお勧めします。

前歯治療に限らず必要な歯科選びのポイントについては、「失敗を防ぐ歯科選び」で紹介しています。