インプラントの成功を左右する6つのリスクファクター

インプラント手術室

インプラントが成功するか失敗するかは、治療を行う歯科医師の技術力・経験・知識にかかっているといえますが、実は患者様側にも、治療の成功の妨げになるリスクファクター(危険因子)があります。インプラントに治療を行う前には、リスクとなるそれらの要素をしっかりと理解しておく必要があります。

インプラントは問題が起こらなければ、半永久的に使い続けることができることから、「第二の永久歯」と呼ばれています。そのような最良の結果へと導くためには、ここで紹介する6つのリスクをできる限り取除くことが求められます。

リスク1歯周病などの歯周疾患

進行した歯周病のイラスト

歯周病を発症しているにもかかわらず放っておくと、インプラントに感染してしまう恐れがあります。インプラントや周囲の組織が歯周病菌に感染する「インプラント周囲炎」が悪化すると、インプラントと結合している顎の骨の吸収が起こります。

それによって歯肉が後退することで、インプラントが露出してしまったり、埋め込んだインプラントが抜け落ちてしまうため、歯周病の症状が見られる部分はしっかり治療する必要があります。

インプラント歯周炎については、「インプラント周囲炎-インプラント治療後に注意すべき症状」で詳しく紹介しています。

リスク2口腔ケアの意識が低い

インプラントを長持ちさせるためには、セルフケアを毎日しっかり行うことが大切です。歯磨きが不十分だと、インプラント部分が不衛生になるため、インプラント歯周炎の原因となります。

歯磨きの際は、通常の歯ブラシのほか、デンタルフロスや歯間ブラシなど補助用具を使って、歯垢を除去しましょう。ただし、どんなにしっかり歯磨きをしても、歯垢を完全に落とすことはできません。そのため、定期的にかかりつけの歯科医院で、歯石除去やPMTCを受けることが効果的です。

リスク3喫煙の習慣

タバコを吸う男性

タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる働きがあるため、手術後、インプラントを埋入した部分に十分に酸素が送られないことで、治癒の妨げとなる可能性があります。

さらに、タバコの煙に含まれる一酸化炭素を吸い込むと、酸素とヘモグロビンの結合が阻害されることから酸欠状態になってしまうと、インプラントと骨の結合が妨げられるほか、インプラント周囲炎を招く恐れがあります。インプラントをしっかり定着させてお口の中を健康に保つためには、禁煙することをおすすめします。

リスク4糖尿病・高血圧・リュウマチなどの全身疾患

インプラント治療の妨げとなるリスクがある全身疾患には、主に以下のようなものがあります。

骨粗しょう症

加齢・ホルモンバランスの崩れ・ダイエットなどが原因で、骨がもろくなる病気です。骨密度や骨質が低下することから、骨とインプラントの結合が難しくなります。特に、ビスフォスフォネート系の薬剤を服用している場合は、インプラント治療の大きなリスクとなるため、必ず歯科医師へ相談してください。

糖尿病

糖尿病によって高血糖が続くことによって、手術箇所の治癒が妨げられるほか、免疫力が低下することで細菌に感染する危険性が高くなります。また、骨吸収の進行によって骨とインプラントの結合が妨げられ、インプラントが脱落する恐れがあります。

関節リウマチ

関節リウマチとは、免疫異常により関節でおこる炎症によって、主に手や足など小さな関節が痛む疾患です。炎症や痛みを抑えるために処方されるステロイドを飲み続けると、骨粗しょう症を引き起こすため、インプラント治療が難しくなります。

貧血

組織で酸素が不足することにより、手術部分の治りが悪くなるほか、免疫力が低下して細菌への感染やインプラント周囲炎のリスクが高くなります。そのため、インプラント治療を行う場合は、まずは治療により貧血を改善する必要があります。

また、高血圧症の方は、インプラント手術により動脈硬化が進行し、心筋梗塞や心不全、脳梗塞、脳梗塞などを併発する恐れがあるため注意が必要です。

リスク5審美的リスク

歯を隠す女性

人目につきやすい前歯のインプラントは、審美的なリスクが高いといえます。インプラントの埋入部分で骨吸収が進むと歯肉も後退するため、隣り合った歯に比べて、インプラント部分の歯が長く見えてしまうことがあります。また、歯肉の厚みが十分でないと、インプラントが透けてしまって歯ぐきが黒っぽく見えてしまいます。

そのため、リップライン(微笑んだ時の上唇の線)が高く、歯肉の露出が大きい方は、前歯のインプラントを検討する場合、インプラント部分が目立つ可能性があることをしっかり考慮する必要があります。

リスク6骨量や骨質

インプラント手術を行う際は、インプラントを埋入する骨の厚みや高さ、骨の密度が十分であることが絶対条件となります。特に、前歯を支える顎の骨は奥歯に比べて薄いという特徴があるほか、鼻の横に上顎洞(じょうがくどう)という空洞があるため、インプラントを埋入する高さが足りない場合は、骨移植で補う場合があります。

また、インプラントを埋入する部分では、十分な骨密度や骨質が求められます。段階別に4つのタイプに分けられる骨の状態のうち、骨の表面の緻密骨が薄く、骨の内部の海綿質の密度が低い「タイプ4」では、インプラントのリスクがかなり高くなります。