顎や顏の形が歪む「顎変形症」とは

顎変形症(がくへんけいしょう)は、上顎骨や下顎骨の変形や位置の異常により、顔が曲がり、唇を閉じられなくなって噛み合わせに異常を起こしている病態です。
具体的には、下顎が前に突き出ている下顎前突症や、上顎が前に突き出ている上顎前突症、上下の顎の歯が突き出ている両顎前突症などが挙げられます。

顎変形症の原因の多くは明らかにはされていませんが、乳児時代のおしゃぶりの長期的な使用や親からの遺伝などに関係が深いとされています。原因が明確なケースとしては、唇裂や口蓋裂などの先天性の疾患、顔やあごの骨折といった怪我による損傷・後遺症などが挙げられます。

顎変形症では「虫歯や歯周病を招きやすい」「口呼吸になる」「顎関節の痛み」「雑音」「流暢に言葉を発するのが難しくなる」などの症状が生じます。また、審美性の面においては自信を喪失し、深刻なコンプレックスを抱えてしまうケースも少なくありません。

不正咬合の改善に外科手術が必要になるケース

歯の向きではなく、顎の骨の変形や顔の変形を外科手術によって改善し、噛み合わせを改善する治療を、一般的な歯列矯正治療に対し、外科的矯正治療と言います。
軽度の顎顔面変形の場合は、歯列矯正治療のみで改善されることもありますが、顎の骨に問題があり、歯の向きを変えただけでは噛み合わせが改善されない重度のケースでは、外科的矯正治療が必要となります。

顎変形症の外科手術では、全身麻酔の上で上顎骨や下顎骨を切って移動し、チタンなどの金属製の骨接合材を使って適切な位置に固定する措置を行います。基本的に手術は口の中から行うため、顔に傷がつくことはありません。
今までは手術に先立ち矯正治療を行うケースがほとんどでしたが、最近では症例によっては手術を先に行うことも可能とされています。

顎変形症の治療は長期にわたります

顎変形症の治療は、外科手術さえ行えば完了するというものではありません。手術前後に矯正治療を行う期間を要するなどと、治療期間は長期にわたります。そのため、治療を依頼する医師や医院は慎重に選ぶ必要があります。
また、顎変形症は10歳くらいから発症するケースもありますが、治療を行えるのは骨の成長が終わる16~18歳以降となります。すぐに治療を行いたくても、骨が成長している時期には治療を開始できないというのが実情です。

骨移植やall on 4は、顎変形症の改善にも役立ちます

当院では、顎変形症を改善するための外科手術として、骨移植やall on 4(オールオン4)技術でのインプラント埋入を行っております。
骨移植やインプラント埋入といえば、本来は「骨の再生」と「失くした歯の修復」が第一目的の治療なのですが、顎顔面変形の改善にも役立てることができるのです。

骨量が足りない場合、骨移植術により骨を再生します

骨量が足りない場合は、インプラントを埋入できる状態を作るために骨移植の手術で骨の再生を行います。歯肉を切り開いて骨を出し、移植用の骨をつけた上に「メンブレン」という人工膜をかぶせ、7ヶ月後に縫合を解いてメンブレンを外す…というのが、骨移植手術の大まかな流れとなります。

移植が成功し、骨量が十分なものになっていたら、インプラントを埋入して治療完了となります。
また、インプラントを埋入した後、自然な歯肉の凹凸を出すために、歯肉を増やす結合組織移植を行うこともあります。

顎変形症の治療による効果

顎変形症の治療を行うと、顎の変形や噛み合わせ、変形による顎関節部の痛みなどが改善されます。また、骨格が移動することにより唇を閉じやすくなったり、容貌も変化したりします。

京都にあります当院でも、口腔外科の先生を招聘し、コラボレートオペによる顎変形症の治療を行っています。