インプラント手術には1回法と2回法があります

インプラント手術の回数や進め方は、患者様の口の中の状態や顎の骨の状態によって異なります。インプラントの安全性を高め、長持ちさせるために、複数回の手術が必要になるケースもあります。
インプラント手術には1回法と2回法があり、それぞれ次のような手順でインプラントを埋入し、人工歯を装着します。

1回法と2回法の流れ

インプラント手術1回法

STEP1麻酔をし、歯肉を顎の骨からはがします。
1回法STEP1
STEP2顎の骨にドリルで穴を開けます。
1回法STEP2
STEP3アバットメント(インプラントと人工歯を連結するパーツ)が一体化したインプラント(ワンピースタイプ)を埋入します。
1回法STEP3
STEP4インプラントと骨がしっかりくっついたら、人工歯を装着します。
1回法STEP4

1回法は手術後、インプラントの先端が歯肉の上に露出した状態になっています。この状態で、インプラントと顎の骨が結合するのを待ちます。
1回法では、アバットメントが露出した状態になっているため、2回法のように歯肉を切開することなく人工歯を装着できます。

インプラント手術2回法

【1次手術】

STEP1麻酔をし、歯肉を顎の骨から剥離します。
2回法STEP1
STEP2顎の骨にドリルで穴を開けます。
2回法STEP2
STEP3カバースクリュー(インプラントの先端につける蓋)をつけた状態にしてインプラントを装着し、剥がした歯肉を元に戻して縫合します。
2回法STEP3
STEP4埋め込んだインプラントが骨と結合するまで待ちます。
2回法STEP4

止血の確認、治療についての説明、術後の注意などの後、帰宅します。
なお、静脈内鎮静法を併用する場合には、平衡感覚などが正常な状態に戻るのに少し時間がかかるため、帰宅の際は車や自転車の運転はできません。

【2次手術】

2次手術は、1次手術の2~6か月後に行います。 (下あごより上あごの方が、治癒期間が長くかかります。)

STEP5骨とインプラントが結合したら歯肉を切開し、埋め込んだインプラントの先端を露出させます。
2回法STEP5
STEP6インプラントにアバットメントを連結します。
2回法STEP6
STEP7切開した歯肉の状態が良くなったら、人工歯を装着します。
2回法STEP7

1回法と2回法の違い

インプラント手術において、歯肉を切開する回数が少ない方が良いと考える方も多いのですが、1回法と2回法の違いは、手術の回数だけではありません。
次のような違いもあることから、必ずしも希望する手術法が採用されない場合もあります。

身体への負担・手術時間

歯肉を切開する回数が少ない分、1回法の方が患者様の身体への負担は少なくなり、また、手術時間も1回法の方が短くなります。

手術の難易度などによって違いがありますが、2回法の場合、手術時間は1次手術が1時間程度、2次手術が30分程度です。2次手術は1次手術に比べて身体にかかる負担や痛みが少なく、抜歯などに使用する局所麻酔で手術を行うケースが多いです。

適用されるケース

2回法のインプラント手術は多くのケースで適用となりますが、1回法は顎の骨の量が十分になければ適用となりません。
1回法は適用となる条件があり、たとえ患者さんが1回法を希望したとしても、適用とならないケースもあるのです。

感染のリスク

1回法と2回法では、術後の感染リスクには大きな違いがないとされていますが、骨造成を行う場合は、1回法の方が感染のリスクが高くなってしまいます。
そのため、骨の量が少なく、骨造成が必要になる場合は2回法が適用となります。

インプラントに負担をかける可能性

2回法では、しっかりとインプラントが歯肉の下に埋入されていますが、1回法では歯肉から露出している部分があります。そのため、1回法の場合はインプラントと骨が結合する前に、インプラントに負担をかけてしまう(余計な力がかかってしまう)可能性があります。

インプラント治療にかかる期間

1回法と2回法では、1回法の方が治療にかかる期間は短くなります。

インプラント手術に不安や恐怖が大きい場合の麻酔選び

通常、インプラント手術は抜歯などにも使用される「局所麻酔」で行われます。局所麻酔は痛みを感じにくくできますが、音や振動は伝わるため、治療に対する不安や緊張を軽減することはできません。
インプラント手術に対するストレスを軽減する方法として、「静脈内鎮静法」があります。

静脈内鎮静法とは

静脈内鎮静法とは、抗不安薬などを静脈内に注射することにより、鎮静な状態を作り出す方法を言います。「鎮静な状態」とは意識を失った状態ではなく、意識が薄れた状態です。
局所麻酔だけでは手術中の音や声、振動などによりストレスがかかりやすいですが、静脈内鎮静法を併用することにより、意識が薄れているためストレスが軽減されます。また、静脈内鎮静法には健忘効果があるため、手術中の記憶が残りません。

当院では、局所麻酔と静脈内鎮静法を併用することにより、リラックスして手術を受けていただけます。歯科麻酔医(日本歯科麻酔学会認定医)が、全身症状を管理しながら行いますので安心できるでしょう。

静脈内鎮静法のメリット

  • ウトウトした状態になるため、恐怖や不安を感じにくく、手術時間が短く感じられる
  • 治療に対する恐怖が緩和されやすくなるため、血圧が安定して、出血が抑えられることがある
  • ウトウトするが、意識がなくなるわけではないため、呼びかけなどに応じられる
  • 全身麻酔とは違い、入院の必要がない

静脈内鎮静法のデメリット

  • 意識が正常に戻るのには少し時間がかかるため、手術当日は自転車や車の運転ができない
  • 別途費用がかかる

インプラント手術前後の過ごし方

インプラント手術前後の過ごし方の注意点として、主に次のようなものがあります。

注意点その1喫煙・飲酒

インプラント手術の前後は、喫煙や飲酒を控えることをお勧めします。

注意点その2運動

インプラント手術後数日間は、ハードな運動を控える必要があります。

注意点その3運転

インプラント手術は、局所麻酔で行う場合と、静脈内鎮静法により行う場合があります。
局所麻酔で行う場合には、一定時間安静にした後、運転を認められることもありますが、静脈内鎮静法の場合は、手術当日は車の運転ができません。

注意点その4食事

治療した側の歯で咀嚼すると、傷口に刺激を与え、感染の原因になります。手術後は、反対側の歯で噛むようにし、固いものや刺激の強いもの、熱いものは控えましょう。
栄養バランスに優れていて、柔らかく食べやすいベビーフードを勧められることもあります。

インプラント手術に関するQ&A

Q1
インプラント手術は医療保険・手術給付金の対象になりますか?
A1
インプラント手術は、医療保険(手術給付金)の支払い対象ではありません。
Q2
インプラント手術は入院が必要になりますか?
A2
近年は、入院設備を整えている医院も増えていますが、インプラント治療は日帰り手術が可能です。骨移植が必要な場合でも、入院しなくて良いケースがほとんどだと言えるでしょう。
「遠方の歯科で手術を受ける」「持病がある」などの事情により、入院を希望する場合には、入院設備のある歯科に問い合わせてみるとよいでしょう。